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1月1日に発生した能登半島地震で、石川県輪島市の漁港付近の広い範囲で3メートルを超える隆起があったと推定されるほか、隆起に伴って海岸線が海側に約250メートル前進したことが分かった。東京大地震研究所などが現地調査の結果を公表した。一方、石川県の観光名所「輪島朝市」なども消失し、地震による被害の大きさが浮き彫りになりつつある。
広範囲で3メートル超の隆起
地震研や岡山大などの研究チームは、地震発生翌日の2日から震源域の南西部にあたる能登半島北部の海岸地形を調査。調査範囲の中で最も顕著な隆起がみられたのは鹿磯(かいそ)漁港(輪島市)で、約3・9メートルの隆起があったと推定されるという。この漁港付近の海岸線沿い約4キロにわたって、複数地点で3メートルを超える隆起が確認されたとしている。
また、同漁港近くの砂浜で隆起に伴って約250メートルの海岸線の前進が確認されたという。
一方、赤崎漁港(志賀町)では隆起が約0.25メートルにとどまったものの、港湾施設への津波被害が確認された。倉庫の外壁に残された痕跡から津波の高さは約4・2メートルと推定されるという。
海岸隆起が大きい地点では顕著な津波被害は確認されず、逆に隆起が小さい地点では被害が確認されたとしている。
輪島朝市「まるで戦場のよう」
能登半島を震源にした最大震度7の地震後、大規模火災が発生した石川県輪島市の観光名所「輪島朝市」。3日、なじみの店を心配して避難先から現場を訪れた男性は、焼けてがれきの山となった街並みを見て「まるで戦場のようだ」とうなだれた。
「ここ、地面にフックがあるでしょ。ここにひっかけてテントを立ててたの。あっちの方までバーッと並んで」
朝市がある輪島市河井町と隣接する鳳至(ふげし)町に住む無職、旭岡正史さん(63)は、避難先の鳳至小学校から、朝市の様子を見に来た。
旭岡さんは朝市に通っては、なじみの鮮魚店に顔を出し、店主に頼んで長野県に住む姉に魚を送ってもらっていた。魚や野菜、民芸品などさまざまな店が並び、地元の人や観光客でにぎわっていた。
1日午後、買い物から帰宅し、車から荷物を降ろそうとしたところで地震にあった。転倒したが、足が悪く立ち上がることができなかった。向かいの家は30秒もしないうちに大きな音を立てて倒れ、「逃げる暇もなかった」と振り返る。
近所の人たちは皆が顔見知りだ。知人ら3人が生き埋めになったという話も聞いた。避難先の小学校からは朝市の火災の様子も目にした。時折爆発音まで聞こえ、小さかった火はどんどん広がっていった。
明治43(1910)年にも大火に見舞われた輪島。「祖母から昔も火事があったと聞いていたけど…。戦場のようになってしまった。ひどいね」。旭岡さんは焼け跡を見つめながらつぶやいた。
永井豪記念館も焼失
石川県輪島市出身の漫画家、永井豪さんの記念館「永井豪記念館」が全焼したことが3日に判明し、SNSでは「失われてしまって残念」「悲しくて仕方がない」といったファンの声が相次いでいる。
平成21年にオープンした同館では、永井さんの代表作である「マジンガーZ」「デビルマン」などの原画や、等身大のデビルマンのフィギュアなどを展示。輪島市の観光名所の一つとなっていた。しかし、今回の地震に伴い、記念館がある市中心部の「輪島朝市」では大規模な火災が発生。200棟以上が焼け、同館も全焼したことが分かった。
同館の全焼が報じられると、X(旧ツイッター)にはファンとみられるユーザーから「一度は訪れてみたい場所だっただけに胸が痛い」「復興したら是非また訪れたい」などといった声が寄せられたほか、焼失前の同館を撮影した写真も相次いで投稿された。